ビタミンCの多様な働き。

ビタミンCの効能は、単に欠乏症を防ぐという働き以外に、推奨量を超えて十分に摂取した時に、分子生物学的、生化学的、生理学的、薬理学的な多様な働きをすることが判っており、とりわけ抗酸化作用に注目が集まっています。
こちらでは、ビタミンCの様々な作用を判りやすく簡単に解説していますので、お時間の許す方はしっかりと学んで下さい。

ビタミンCの効能とは?

こちらでは、約40種もあるとされているビタミンCの働きの中でも、特に注目して頂きたい代表的な効能を紹介しています。

1.抗酸化作用で酸化を防ぐ。

ビタミンCは、アスコルビン酸⇔アスコルビン酸ラジカル⇔デヒドロアスコルビン酸という可逆的な酸化還元系を構成していますが、この中のアスコルビン酸ラジカルは体の成分との反応性が低く、有害な作用を及ぼさない善玉ラジカルです。
ラジカルを捕捉するのはラジカルの役目ですが、アスコルビン酸ラジカルは悪玉ラジカルを捕まえて、それを無害なものにします。
ラジカルを捕捉するものをスカベンジャーといいますが、ビタミンCはスカベンジャーとして働いており、基本的な働きがこの抗酸化(還元)作用なのです。

私たちが呼吸でとり入れた酸素の1・2%は、活性酸素という極めて反応性が高いラジカルになります。
このラジカルはフリーラジカルとも呼ばれ、細胞膜の脂質を酸化して過酸化脂質を生じ、また、DNAやタンパク質などを攻撃して細胞の機能を低下させてしまい、そしてこれが、ガンや老化をはじめ、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、白内障などの引き金となってしまいます。

ラジカルを捕まえ酸化を防ぐ作用を抗酸化といいますが、酸化還元系に関与する物質の酸化型を還元型にもどす、その他の物質の酸化を防ぐ、過酸化脂質の生成を抑える、などの働きも抗酸化作用です。

2.ビタミンEを助け、相乗的な抗酸化作用を示す。

細胞膜の脂質の酸化を防ぐのは脂溶性のビタミンEの役目ですが、酸化を防ぐということはビタミンE自体は、酸化されるということなのです。
ビタミンEは、ビタミンEラジカルを経て酸化型のビタミンEとなって役目を終えていきますが、そうなると絶えずビタミンEを補給しなければいけなくなってしまいます。
体内にビタミンCが十分にあれば、ビタミンEラジカルが還元型のビタミンEにもどり、繰り返し抗酸化物質として働くことが出来るのです。
つまり、ビタミンCとビタミンEは、相乗的に抗酸化作用を発揮するのです。

ビタミンCは、水溶性ですので体の60%を占める水の場における酸化を防ぎますので、抗酸化作用を発揮する為には、ビタミンCの十分な摂取に加えてビタミンEを摂ることが、体全体の酸化を防ぐ為に必要です。

3.強くてしなやかなコラーゲンを作る。

ビタミンCは、コラーゲンのプロリンとリジンの水酸化に必要とされ、コラーゲンの立体構造の形成や遺伝子の転写を促進します。
また、コラーゲン繊維の安定性に大きく関わっていますので、生成と維持に欠かせない存在です。
ビタミンCが欠乏するとコラーゲンが生成できなくなって、結合組織が弱くなり、細胞と細胞が離れやすくなり、出血し、そのうち壊血病になってしまいます。
歯茎から出血しやすいというのは、ビタミンC不足の最初のサインなのです。

コラーゲンは、体のタンパク質の三分の一を占める重要なタンパク質です。
結合組織の主成分として、細胞と細胞を繋ぎあわせて、体の骨組みを形づくり、組織や臓器を支えており、骨、軟骨、腱、皮膚、血管、歯など体の至るところに含まれています。

4.ストレスに対抗する。

「ストレスを受けると体内のビタミンCが減少する」とよく言われていますが、これはストレスに対抗する為の「副腎脂質における副腎脂質ホルモンの生成」と「副腎髄質におけるカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)の生成」にビタミンCが多量に使用される為なのです。
その為、ストレスを受けてビタミンCが減少する環境にある方は積極的に補給する必要があります。
また、ストレスは血液中の過酸化脂質を増加させる要因にもなりますので、ビタミンCの抗酸化作用は、抗ストレスにとしても働くのです。

私たちの体には、ストレスに対抗する為のメカニズムが備わっていますが、特に重要なのは脳の下垂体と副腎の働きであり、下垂体が指令を送って副腎においてホルモンやアドレナリンなどの分泌を盛んにしてストレスを跳ね返そうとします。(※下垂体と副腎は、ビタミンC濃度が最も高い組織です。)

5.薬物代謝系に関係する。

体に非生体物質が入ってくると肝臓のミクロソームにある薬物代謝系が働いて、速やかに体の外に排出しようとしますが、ビタミンCはシクトロームP450を中心とする薬物代謝系において、酵素の生成・活性・活性誘導に必要とされます。
その為、芳香族の水酸化による解毒作用と合わせて解毒作用を有すると言えますし、ビタミンCが毒物に直接作用して、それを無毒化することもあります。

体内にないものは、体にとって異物(生体異物、非生体異物)と認識されますが、医薬品、食品添加物、農薬などは自然界にないものを化学合成していますので、体内では異物となります。

6.糖の代謝に関わり、血糖を減らす。

ビタミンCは、糖代謝の基本的な代謝経路となるHMP経路がスムーズに流れるように作用します。
また、ビタミンCにはインスリン様の作用によって血糖を減らす働きもありますので、インスリンと併用することでインスリンの血糖降下作用を少し高めます。

糖の代謝は、代謝の基本であり、タンパク質や脂質などの代謝と密接に関係しています。

7.アミノ酸の代謝に関わる。

ビタミンCは、プロリン、リジン、フェニルアラニン、チロシンなどのアミノ酸の代謝に関わっています。
チロシンが代謝されると、ヒドロキシチロシン、ドーパキノンを経てメラニンになりますが、ビタミンCはチロシンからのメラニン生成を抑え、また、酸化型の濃色メラニンを還元して無色のメラニンにします。
このようにして、ビタミンCはシミを防ぎ、ソバカスを緩和するのです。

8.葉酸の代謝に関わる。

ビタミンCは、葉酸からテトラヒドロ葉酸(葉酸の活性型)への還元に関与しており、また、活性型の葉酸を維持するのにも働いています。
葉酸は、胎児の先天異常である神経管欠損症を予防することで、妊娠する可能性がある女性に摂取が勧告されていますが、ビタミンCと併用することでより効率的に作用します。

9.カルニチンを増やす。

脂肪酸を燃焼させてエネルギーが発生する過程でカルニチンが必要となりますが、ビタミンCが不足するとカルニチンの生成が低下して、脂肪酸からのエネルギーが減少し、筋肉の活動が低下します。
次に、体が疲労を覚えるようになり、さらにビタミンC不足が続くと慢性疲労状態となってしまいます。
ビタミンCを十分に摂取すると、カルニチンがどんどん作られて脂肪酸が燃え、エネルギーの発生量が増大しますので、筋肉の活動が活発になり、疲れ難い体になります。

10.鉄の吸収を高める。

食事のすぐ後にビタミンCを摂ると、吸収され難い非ヘム鉄の吸収率が高まりますが、これは鉄イオンの3価から2価への還元によるものです。
鉄の吸収率は食事内容によって異なりますが、一般的に100mgのビタミンCで3〜6倍に高まります。
また、ビタミンCは、体内における鉄イオンの還元、鉄を含むタンパク質(ヘモグロビン、シトクロームP450、フェリチンなど)の生成と代謝にも関係しています。

鉄の吸収は、肉などに含まれているヘム鉄と、穀物や野菜・果物などに含まれている非ヘム鉄で違い、ヘム鉄は吸収されやすく、非ヘム鉄は吸収され難いのです。

11.カルシウムの吸収と代謝に関係する。

ビタミンCはカルシウムの吸収と代謝、また、細胞のカルシウム濃度の調整にも関係しています。
骨粗鬆症の予防や、丈夫な骨の形成といえばカルシウムと思い浮かぶでしょうが、カルシウムの摂取だけでは不十分です。
実は、骨の半分はコラーゲンで出来ていますので、コラーゲンの生成と維持に欠かせないビタミンCも必然的に骨の発育と代謝に不可欠となります。

12.有害金属に対するデトックス作用。

有害な金属が体内に入ってくると、ビタミンCは、これらの体外への排泄を促します。
鉛中毒、水銀中毒、カドミウム中毒などの人がビタミンCを摂取すると、これら金属の血中濃度が下がり、中毒症状が軽くなることが観察されています。
また、クロムの6価を3価に還元して毒性を弱めますので、6価クロム中毒にも有効です。

13.抗ヒスタミン作用。

ビタミンCは、アレルギー反応の一因であるヒスタミンの放出を抑えて、ヒスタミンに作用して働きを抑えますので、抗ヒスタミン作用を持つことでも知られています。
血中のビタミンC濃度が高い人は、ヒスタミンが少ないことが示されており、血中ヒスタミンの多い人がビタミンCを摂るとヒスタミンが減少します。
また、ストレスを受けるとヒスタミンの生合成や放出が盛んになりますので、ヒスタミンという面から見てもビタミンC摂取は有益なのです。

14.悪玉コレステロールを減らします。

ビタミンCは、ヒドロキシメチルグルタチルCoA還元酵素を阻害して、LDLコレステロールの生合成を抑えるだけでなく、コレステロールの胆汁酸への異化を促進します。
総コレステロール値の高い人にビタミンCを与えて、血中LDLコレステロール値の変動を調べた研究が多数ありますが、値の高い人では、LDLコレステロール値が低下するとされています。
(※コテステロール値が正常範囲の人では、値が殆ど変わりません。)

15.中性脂肪を減らす。

中性脂肪値の高い人がビタミンCを十分に摂取すると、その値が下がるとの報告があり、1000mgをこえる重症の患者が400mgに下がった例もあります。
LDLコレステロールや中性脂肪が多い状態を高脂血症と言いますのが、ビタミンCは高脂血症の予防しますし、高脂血症の改善にも役立つのです。

16.血圧が上がらないようにする。

高血圧の人を調べてみると、血中ビタミンCの濃度が低い人が目立つと言われおり、野菜や果物をたくさん食べて血中のビタミンC濃度の高い人は、正常な血圧を維持しています。
しかしながら、ビタミンCが血圧の上昇を抑えるメカニズムについては、カルシウム拮抗作用などが考えられますが、いまだはっきりとはしていません。
その為、ビタミンCは血圧の高い場合に、おだやかな降圧作用を示すと考えられています。

血圧が高いのに弱くて脆い血管では、破れて出血してしまいます。
ビタミンCはコラーゲン生成に関与して、強くて弾力性に富み、高い血圧に耐えられる血管を作り、それの維持に貢献しますので、高血圧の人がビタミンCを摂る理由の1つにもなっています。

17.血栓を防ぐ。

ビタミンCは、血液のプラスミノゲン活性化因子(フィブリンを溶かす酵素活性)の産生を促す働きがありますので、ビタミンAと一緒に摂取すると、血栓の予防に非常に効果的だと言われています。
また、プロスタサイクリンの産生を促し、その分解を抑え、血小板の凝固を防ぎます。

血管の中で血液の凝固が起こり、血の塊がその場にとどまると、血管が狭くなり、ついには閉ざされて血液の循環が出来なくなります。
この血液の凝固を「血栓」といい、フィブリン(繊維素)、血小板、赤血球などからなっています。

18.免疫機能を増強する。

ビタミンCは白血球(特に好中球)や、マクロファージ(大食細胞)の機能を高めて、機能異常を改善するだけでなく、Tリンパ球の幼若化(芽球化)を盛んにし、分裂を促します。
ビタミンCの摂取によって、補体の活性が高まる、抗体価が上昇する、免疫グロブリンIgG・IgM・IgAなどが上昇することがあります。

私たちの体には、細菌やウイルスの感染に対抗し、多くの病気対する抵抗力を高めるために免疫機能が備わっており、ガン細胞さえ処理しています。
免疫系には、細胞やウイルスの種類を問わない非特異的機構(白血球やマクロファージなどによる障害除去機構、局所炎症などの反応性機構など)と、特定の細胞やウイルスに有効な特異的機構(リンパ球、抗体、補体などの免疫作用)があります。
免疫応答は、体液性(Bリンパ球による)と細胞性(Tリンパ球による)にわけられます。

19.抗炎症作用がある。

炎症はラジカルを抜きにしては語れないと言われるほどラジカルが重要な関与をしており、一方で、炎症を抑える抗炎症剤の作用メカニズムはラジカルを捕捉することである、と考えられています。
ビタミンCは、炎症反応において生じるラジカルを捕捉し、また、多核白血球のリポキシゲナーゼによるロイコトリエンB4の産生を調整していますので、抗炎症作用にも期待されています。

20.脳の機能維持に貢献する。

ビタミンCはシナプス小胞を刺激して、脳内で知能・学習・記憶と関係しているアセチルコリン(神経伝達物質の1種)の放出を促すだけでなく、アセチルコリンレセプターの調整にも関係しています。
また、ノルエピネフリンやドーパミンなどの神経伝達物質にも関わっています。
ビタミンCの摂取で、知的障害(精神薄弱)児や普通児のIQ(知能指数)が上がるという報告や、高齢者の記憶力を改善するという報告があります。

ビタミンCは脳にも豊富に含まれており、100gあたりの量は最も多い副腎の半分以下ですが、脳は1300g前後ですので、ビタミンCの総量は副腎の30倍以上になります。

21.利尿作用がある。

ビタミンCの利尿作用は、利尿剤ほど強力ではありませんが、副作用のない安全なものとしてよく使用されており、利尿剤と併用されることもあります。
当然、水をたくさん飲むことが基本ですが、小便の出の悪い人の排尿を促します。

利尿とは、小便の出をよくすることです。

22.便を柔らかくする。

穏やかな緩下作用を持つビタミンCは、便を柔らかくする働きがあります。
これは、アスコルビン酸という化学名のとおり、ビタミンCが酸として作用することと、ビタミンCの腸内分解によって発生するガスによって、腸の蠕動が高ぶる為だと考えられています。

作用し過ぎることで、稀に下痢を起こすことがありますが、一過性で良性なので心配はいりません。

23.ウイルスを不活化する。

ビタミンCには、ウイルスを不活化(活性をなくす)する働きがあり、ポリオウイルスやインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスなどに対しては、すでに実証されています。
さらに、インターフェロンの産生を促してその活性を高めることで、ウイルスの増殖を抑える間接的な働きも持っています。

ウイルス感染症には、風邪(カゼ)、インフルエンザをはじめ、ウイルス性肝炎、ポリオ、日本脳炎、はしか(麻疹)、ヘルペス、水疱瘡(みずぼうそう)、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)などがあります。

24.病原菌を殺し、毒素を中和する。

ビタミンCは、サルモネラ菌、大腸菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、ジフテリア菌、ボツリヌス菌など病原菌を殺す作用を持っていることが実証されています。
また、破傷風菌、赤痢菌、ブドウ球菌などの細菌の毒素を中和することが実証されています。
さらに、腸管出血性大腸菌のO157を殺菌し、O157のベロ毒素を中和すると考えられています。

ビタミンCは病原菌を殺しますが、腸内の有用乳酸菌には作用しません。

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